風車がところどころにあり、平行するようにしてある川は澄み、風が緑の木々や葉をゆるやかに撫ぜていた。牛乳缶を背中の両側にぶら下げた駿馬が歩き、籾や草を抱えこむようにした耕耘機が、のろのろとすれ違った。典型的なポルトガルの南部、アレンテージョ地方の牧歌的な農村風景であった。だが、旅行者にとって心地よい光景が、地元の人にとって快適なものになっているとは限らない。面積九万二〇〇〇平方キロメートルと、日本の二五パーセントにも満たない小国ポルトガルだが、南北に細長い国だけあって、歴史や文化はもとより、気候、地形でも多様な違いがある。例えば、西北部にはポルトガル王国の中核となったミーニョ地方があるが、ここは、「ポルトガルの庭園」と言われるだけあって、緑豊かな山や丘陵が美しくのどかである。土地に強い愛着を持つ農民の家族は、それぞれが土地を分割して所有しているといわれている。町は人口密度が高く、豊饒なポルトワイン原産地として知られるほか、伝統的な遠洋漁業、造船、セラミックス、木材などが、重要な産業となっている。ところが、ミーニョ地方の東にある、トラス・オス・モンテス地方は、一変して険しい山岳地帯となる。冬の降雪も珍しくない辺境の地といったようなところで、土地は乾燥し不毛で、貧しい牧畜に頼らざるを得ない。そしていま走っているアレンテージョ地方は、かつての国土回復運動以来の、大地主による大土地所有制が続いている。小作農は国内でも最も賃金が低く、生活は豊かでない。大農場の丘の上には、時折、モンテという小作農の集落がある。白壁の家々は風景をひときわ美しいものにしているが、よく見れば、家々の軒は低く窓も小さい。