エルメスのスカーフ

2011.05.06

エルメスのスカーフは日本の若い人の間で、人気が衰えない。若い人が憧れる気持ちはよくわかる。私もそうだった。今も、新しい柄が発表されたら見に行かずにはいられない。それは質のよいリトグラフを見るような気持ちだ。しかし、あのズシリと手応えを感じるほどのヘビーシルクのスカーフは、若い娘には太刀打ちできないものではないかと思うのである。その素材の、なにものをも寄せつけない風格の前には、未成熟ゆえに曖昧な若い顔は負けてしまう。好きで集めたスカーフを、どう結んでみても勝てない自分の顔に、がっかりして箱にしまい直したことが私自身、何度もあった。だから、エルメスを蝶のように顔の前で結んで、半ば反り返るようにして歩いている若い人をみると、おおっ、エルメス様のお通りだ、などと思ってしまうのである。その人よりエルメスが歩いているように見えてしまう。エルメスのスカーフをして、それに負けず、しっくりとなじませるためには女としての年季がいる。いやむしろ、人として生きてきた歳月が必要なのだ。