違法運用がまかり通れば、個々の建築士が意識しなくても、モラルは低下する。まず、欠陥住宅が発生した場合、建築士が感じる「責任感」である。たとえば、設計ミスで建築主から訴訟を起こされたとき、もし、建築士が資料を調査し、自ら設計図書を書いているならば、発生した欠陥に対して責任を感じるであろう。ところが、図面を作成し、失態を演じたのは無資格者である。ただ設計者の名義が自分なので、しかたなく裁判では敗訴判決を受ける。
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公的には責任をとらされるが、内情は異なる。業界内では「無資格者を守るために犠牲になってやった」と美談になる。また、周囲も設計実務がどのように行われているかを知っているから、裁判で負けた建築士に対し「いい加減な仕事をして建築士の恥だ」「彼の技術レベルは低いので仕事を紹介するのは止めよう」などという話は出ない。逆に、「ドジな設計スタッフ(無資格者)を雇って運が悪かったな」「きっとコネか何かで雇わなければならなかったのだろう」など、憐欄の情で建築士は包まれる。当然、裁判に負けたことに対して、何ら自責の念も倫理問題も感じない。建築主に対しては、わずかな損害賠償と、形式的な謝罪だけですんでしまう。