ブランド志向の強い腕時計でも同じような現象が起きている。時計の市場規模は五〇〇○億〜六〇〇〇億円と推定されるが、そのうち、国内メーカーの海外生産品を含めると、輸入時計が全体の七割を占める。海外ブランドの人気は高く、売れ行きは伸びる一方。圧倒的な海外ブランド優勢型のマーケットでは、いくつかのタイプに人気が集中するという。スイスの超高級ブランドのパテックーフィリップやショパールの日本総代理店をつとめ、ロレックスの特約店でもある一新時計の西村恵隆社長はいう。「フラソクーミごフーやショパールなどの特徴のある時計がよく売れますね。ロレックスはバブルの前から人気の高いブランドですが、売れ筋はよく知られているオイスターというタイプです。チェリーニというタイプもあるのですが、オイスターにはかないません」ロレックスのオイスターは、マスコミへの露出度が高く、ロレックスの定番となっている。いわば、「ザーロレックス」だ。認知度が高く、形を見れば、すぐにロレックスの時計だとわかる。だから売れる。売れれば、さらにオイスターを知るΛが増え、認知度もアップする。「売れるからさらに売れる」という循環なのだ。一流だからブランド品は売れるとは限らない。わかりやすいから、みなが知っているから売れるのである。鞄の老舗タユザワの若林昇はこういっていた。「品質では、有名なブランドと遜色のないインポート製品を扱っていますが、あまり売れない。有名じゃないブランドは見向きもされません」一方、名の通ったブランド名があまり通用しない世界もある。宝飾品だ。楽天プリマの小渾隆生は打ち明ける。「ブルガリやティファニー、カルティエなどの特徴的な製品や、ブランド名がわかりやすい製品は売れますが、ダイヤモンドなどの石ものは違います。石でブランド名はわかりませんからね。売れるのは、圧倒的にでかいものです。ノ≒ブランドでも売れる。大きければ大きいほど人気が出ます」ティファニーだったらオープンハート、ブルガリだったらビーゼロワソ、カルティエだったら三連リング。こうしたわかりやすいデザインならば、ブランド名はすぐに浮かぶ。ブランド名が通じやすいカテゴリーと、ダイヤモンドのような通じにくいカテゴリーとで消費者はブランドを使い分けているのである。これが成熟した消費といえるのだろうか。少なくとも実利的な消費であるとはいえそうだ。